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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第26回
Dizzy Atmosphere
Lee Morgan, Wynton Kelly, etc



ディジー・アトモスフィア
リー・モーガン、ウィントン・ケリー、他
撰者:松井三思呂


Dizzy Atmosphere
Lee Morgan, Wynton Kelly, etc
【Amazon のディスク情報】

SIDE 1
1 Dishwater
2 Someone I Know
3 D.D.T
SIDE 2
4 Whisper Not
5 About Time
6 Day by Day
7 Rite of Swing
8 Over The Rainbow
CDではOJCから出てるものは、上記2,4,8の別テイクを収録。また、JAZZ BEATから出てるものは、4の別テイクに加えて、ジャズ・ステイツメン名義の2曲と、ウェイン・ショーターとの3曲がボートラ収録。ジャムセッションアルバムの傑作。





GOSPEL STARS IN CONCERT
Sam Cooke With Soul Stirrers, etc
【Amazon のディスク情報】

スペシャルティ・ゴスペルの神髄とも言えるライブアルバム。特に素晴らしいのは何と言っても、サム・クック&ソウル・スターラーズの3曲で、スタジオ録音では聴けない長尺のサムのシャウトが聴ける。サム・クックのシャウトとスターラーズの分厚いコーラスに神が舞い降りるだけではなく、聴衆も南部の教会でのごとく絶頂に達してしまい、叫びまくっているので、サムの歌声が聴こえないところもあるくらいだ。



Sunflower Jazz Night
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
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Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

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「節電の夏」……しかし、暑いですね。この場を借りて、暑中お見舞い申し上げます。
さて、私の担当としては前回、前々回とアルバート・アイラーという、どうしても重たくなってしまうアーティストをとりあげたので、今回は冷たいビールの肴になるような肩の力の抜けたハードバップ・セッションを紹介することにします。
第25回コラムでの大橋さんの名言、『野心のない「当たり前」のソロ』……ウッズとクイルを評してですが……こんなソロが一番お酒のアテになるもんね。



「ディジー・アトモスフィア」はアルバムタイトルが示すとおり、レコーディング当時にディジー・ガレスピー楽団の主要メンバーであった7人によって演奏されている。最大のポイントはボスのディジー親分抜きのセッションであること。喩えは少し違うかもしれないが、中学、高校の部活で怖い監督や鬼コーチが出てこない時に、選手達が感じるリラックス感。あるいは、口うるさい上司が出張や不在の時、部下達が感じる職場の風通しの良さ。このアルバムの演奏にはこんな空気感が溢れだしているような気がする。

録音はガレスピー楽団のウエストコースト・ツアーの合間を縫って、1957年2月18日にロサンゼルスで行われている。
メンバーは次の7名で、年長順に記すと、

アル・グレイ/Al Grey(tb)
録音当時31歳、ガレスピー楽団には56年の10月から57年の7月まで在籍、その後カウント・ベイシー楽団に移籍。

ビリー・ミッチェル/Billy Mitchell(ts)
録音当時30歳、ガレスピー楽団には56年の5月から58年の1月まで在籍、その後アル・グレイに少し遅れて、58年からカウント・ベイシー楽団に移籍。

チャーリー・パーシップ/Charlie Persip(ds)
録音当時27歳、53年から58年までガレスピーのビッグバンドだけではなく、スモールコンボのドラムも担う。また、ビッグバンド在団中に、自分がリーダーとなるコンボ「ジャズ・ステイツメン」を結成。

ウィントン・ケリー/Wynton Kelly(p)
録音当時25歳、ガレスピー楽団には54年の9月から58年の1月まで在籍、その後多くのセッションを経て、59年にはマイルス・デイビスのグループに迎えられる。

ポール・ウエスト/Paul West(b)
録音当時23歳、ガレスピー楽団には56年の10月から58年の1月まで在籍。

ビリー・ルート/Billy Root(bs)
録音当時22歳、ガレスピー楽団には56年の10月から57年の5月まで在籍。

リー・モーガン/Lee Morgan(tp)
録音当時なんと18歳、ガレスピー楽団には56年の10月から58年の1月まで在籍。本セッションまでにガレスピー楽団以外で、5つのレコーディングセッションを経験。

本アルバムはスイング・ジャーナル選定のゴールド・ディスクとして日本盤が発売されたが、日本での知名度、人気を考えて、「リー・モーガン=ウィントン・ケリー・セプテット」というグループ名で売られていた。しかし、実際はこのセッションに特定のリーダーはいなくて、当時ガレスピー楽団に在籍していたベニー・ゴルソンがアレンジで参加しているものの、各自がノビノビと演奏し、平等にソロをまわしていく典型的なブローイングセッションである。なお、ジャケットカバーは年長であるアル・グレイとビリー・ミッチェルの写真が使われている。

そうは言うものの、やはり、リー・モーガンに注目せざるを得ないことも事実であるが、後で述べるように他のメンバーのいぶし銀的魅力も捨てがたい。他のメンバーにしても、一緒に演奏するなかでモーガンは一目置く存在であったであろう。ただ演奏面ではそうであっても、オーケストラという多人数でのツアー生活では、神童と呼ばれた最年少天才トランペッターも先輩達の命令には服従しないといけなくて、お酒やオネエチャンなど、いろいろ段取りをさせられていたのかもしれない。そんなことを考えながらお酒が飲めるほど、肩の力の抜けた好アルバムである。

私がジャズを聴き始めた頃、幻の名盤ブームなるものがあって、その火付け役がスイング・ジャーナル社の「幻の名盤読本」(74年4月)であった。“幻の名盤”という表現はあまり好きではないが、このアルバムもご多分にもれず、この読本に掲載されている。その大きな理由は、極端にジャズのイシューが少ないスペシャルティというレーベルから発売されたことにある。

スペシャルティ・レコードは1946年にロサンゼルスで生まれている。アルバムのカタログを調べてみると、68枚のなかでジャズアルバムと呼べるものは、ジェラルド・ウィギンス、フランク・ロソリーノの各リーダー作、本アルバムの3枚しかない。その他は、ロイド・プライス、リトル・リチャード、ラリー・ウィリアムスなどのR&B勢、サム・クック在籍中のソウル・スターラーズ、ピルグリム・トラヴェラーズ、スワン・シルヴァート−ンズなどのゴスペル勢がずらりと並ぶ。

実を言うと、小生この世界も大好きで、かなりハマった頃もある。このコラムの趣旨からすれば、掟破りで横道にそれまくっているかもしれないが、ここでスペシャルティ・ゴスペルの神髄とも言えるライブアルバムを紹介したい。

「GOSPEL STARS IN CONCERT」(P-VINE PCD-1821)は1955年、ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムでのライブで、レーベルのスターであった4組が収録されている。特に素晴らしいのは何と言っても、サム・クック&ソウル・スターラーズの3曲で、スタジオ録音では聴けない長尺のサムのシャウトが聴ける。2曲目「Be with Me Jesus」の後半から最後の「Nearer to Thee」は、黒人音楽の歴史に残るものだと思う。神がかりという言葉があるが、サム・クックのシャウトとスターラーズの分厚いコーラスに神が舞い降りるだけではなく、聴衆も南部の教会でのごとく絶頂に達してしまい、叫びまくっているので、サムの歌声が聴こえないところもある。CD帯の言葉を借りるなら、「壮絶、そして聞く者悶絶」であるし、鈴木啓志氏はライナーで「この場にぼくが居合わせたらどんなにすばらしかっただろうか。涙をボロボロ流して本当に失神してしまったかもしれない。」と記している。


さて、このあたりで「ディジー・アトモスフィア」に話を戻して、冒頭の「Dishwater」である。
アルバムのキラーチューンでもあるこの曲は、いきなりウィントン・ケリーのピアノソロで幕を開ける。テーマのメロディも弾かず、いきなりのソロだが、ケリーは全開で飛ばしまくる。このケリーのソロに続いて、4管ユニゾンでのリフのテーマが鳴る。このゾクゾク感はハードバップの快楽、醍醐味ここにありで、この曲が嫌いな人とはお友達になりたくない。
続いて、文句なしのモーガンのソロ、「小僧あいかわらずやるな」とばかりに、それに続く豪快なルートのバリトン、軽快なグレイのトロンボーンのソロも素晴らしい。

本アルバムがジャムセッションの熱さに加えて、アレンジが効いた完成度の高いものとなっている理由は、当時ガレスピー楽団のアレンジャーであったベニー・ゴルソンとロジャー・スポットの存在が大きい。プレスティッジの一部にある粗製乱造気味のセッションとは一味違う。
A面の3曲は全てロジャー・スポットの作・編曲で、2曲目の「Someone I Know」は「Dishwater」とは一転して重厚なアレンジのバラードである。そして、A面の最後「D.D.T」は軽快にスイングするナンバーで、ここでのビリー・ミッチェルのテナーソロは筆舌に尽くしがたい出来。

B面は哀愁の(この枕詞が似合うと思いませんか)ベニー・ゴルソンの代表作「Whisper Not」で始まる。ここではモーガンのミュート・プレイが秀逸。お約束のゴルソン・ハーモニーの典型だが、はまってしまう。
2曲目「About Time」はロジャー・スポットの曲で、ミッチェル、モーガン、ケリーの短いが印象的なソロを織り込んだスインギーなナンバー。続いての「Day by Day」はスタンダードの唄物で、グレイを全面的にフィーチャーしたバラード。4曲目の「Rite of Swing」は再びスポット作のスイングナンバーで、ジャケ写真の年長者グレイ、ミッチェルのソロが渋い。そして、有名な「Over The Rainbow」でアルバムは幕を閉じるが、ここでもミッチェルのテナーが朗々と鳴って、お酒がはいってたりすると、ウルウルきてしまう。

「DIZZY ATMOSPHERE」は、我々放浪派の4人がお世話になっている三宮のジャズバー「さりげなく」のマスターの愛聴盤でもある。「さりげなく」でそろそろ腰をあげようかなという時に、このアルバムがかかると、ラムかバーボンのソーダをもう一杯となる。
ねえマスター!



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