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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第24回
Mr. Rhythm
Freddie Green



ミスター・リズム
フレディー・グリーン
撰者:平田憲彦


Mr. Rhythm
Freddie Green
【Amazon のディスク情報】
フレディー・グリーンが録音した唯一のリーダー作。といっても、別にソロを取るわけでもなく、自作曲で埋め尽くしているわけでもない。あくまでもそれまでやってきたスウィングジャズをここでもやっている、というマイペースぶりがカッコいい。リズムに徹する、というといかにも裏方だが、そこは実際にやってみるとかなり難しいことが分かる。フレディーのように弾くことは、実はとってもテクニックが要るのだ。



The Complete Decca Recordings
Count Basie
【Amazon のディスク情報】
1937年〜1939年に録音されたカウント・ベイシーのデッカ・レコーディングの全集。63曲が収録されていて、コンボからビッグバンド、ボーカルまで、ジャズのエッセンスを凝縮したかのようなすごい3枚組。曲の良さ、アレンジのかっこよさ、そしてなによりプレイヤーの素晴らしいプレイ。ベイシーサウンドの真骨頂であり、スウィングジャズを代表するアルバムである。我らがフレディーも心地良いリズムを刻み続けている。



Count Basie & the Kansas City 7
Count Basie
【Amazon のディスク情報】
1962年に録音されたベイシーのスモールコンボ作品。デッカ時代を彷彿とさせるベストメンバーが、絶妙なスウィング感とスカっとするドライブ感、うっとりするスローナンバーなど、全曲で気持ちの良いジャズを聴かせてくれる。録音も素晴らしいので、くっきりクリア、それぞれの楽器の粒建ちがハッキリと聴き取れる。もちろんフレディーのギターも。私にとっては生涯の名盤、棺桶に入れてほしいアルバムトップ10にも入る傑作。何もかもが素晴らしい、非の打ち所のない作品。


Sunflower Jazz Night
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
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Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Doodlin
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ジャズに登場するほとんどの楽器は、リード楽器としてもリズム楽器としても成立する。つまり、たとえばピアノを例にすると、ピアノはリードパートを弾くことも出来ればリズムパートを弾くことも出来る。そして、たいていのジャズ・ミュージシャンは、自分が担当する楽器について、リードとリズムの両方を演奏するのだ。サックスなどの管楽器はリズムパートというのは想像しにくいかもしれないが、ビッグバンドを考えるとリズムパートを積極的に吹いているのがわかる。さらに、ハードバップからモードジャズに進化したジャズではリードパートの重要性が強調されていったので、プレイヤーのアドリブというリードパートこそジャズの根幹と見られるような風潮すら感じられるだろう。

しかし、ジャズの原点に立ち返ってみると、プレイヤーの成すべき事は、リードを演奏する、ということではなく、あくまでもグルーヴを生み出すことにあった。それはスウィング感といわれるものだ。リードは、そのグルーヴをより一層豊かにするための仕掛けだったり要素だったりしたのだ。それがいつしかリードの方に注目が集まっていっただけで、ジャズという音楽があくまでグルーヴを重視したものであるという点は、今に至るまで不変である。たとえ変拍子を多用したナンバーであっても。パーカーにしても、あの凄まじいアドリブに注目が集まるが、彼のグルーヴはただごとではないくらいにスウィングし、超越している。
なぜグルーヴが重要なのか。それは、ジャズの原点はダンスミュージックだからだ。はじけるダンスやチークダンスも含め、人々の心を楽しく、あるいは活気づけ、いつしか体が動いている音楽、それがジャズの原点であるので、いくら時代が進んで、難しそうな音楽に聞こえたとしても、今でも素晴らしいジャズは、聴いている人の心に火をつける。

ジャズの楽器の中で、ギターは割とマイノリティだ。ロックやブルースでは圧倒的にメジャーな存在であるギターは、ジャズではそれほど常に注目される楽器というわけではない。ギターがまったく入っていないアルバムのほうが多いくらいだ。ロックでは考えにくいことだが。

ジャズギターといえば、ウェス・モンゴメリーやジム・ホール、ケニー・バレルといった名前が真っ先に紹介されるだろう。確かにそれはその通り。ジャズギターを聴こうと思えば、彼らの演奏から聴くのはまっとうだと思うし、エレクトリックギターのジャズはピアノや管楽器のジャズとはまったく異質のサウンド、まろやかでブルージーなジャズを楽しむにはお薦めである。
しかし、お薦めであるからといってそれが全てであるということではない。ウェス・モンゴメリーやジム・ホールといったギタリストはメロディやアドリブパートを演奏するリード奏者としての側面が強いが、リズムパートばかりを演奏していた一風変わったギタリストがいたのだ。それがフレディー・グリーンというギタリストだ。
今回取り上げているのは、そのフレディ・グリーンの唯一のリーダー作『Mr. Rhythm』である。

フレディー・グリーン、この名前を是非覚えておいてほしい。何かのジャズ談義になったとき、フレディー・グリーンの名を出せば、たちどころに話題はスウィンギーになるのは間違いない。フレディー・グリーンはリードパートを弾かずにずっとリズムパートのみを弾いてきた希有なギタリストなのだ。そして、ジャズのグルーヴを身をもって証明してきた素晴らしいギタリストでもある。

フレディーがリードを弾いているナンバーはほとんどない。有名なカウント・ベイシーのリズム隊『オール・アメリカン・リズム・セクション』においても、フレディーはリードをとらず、延々とリズムを刻むことに徹している。一説によると、フレディーはリードが好きではなかったということだが、私が想像するに、リードが好きではないというよりは、リズムを刻むことが好きで好きでたまらなかったのではないか、ということだ。誰だって好きなことだけしていたいではないか。

フレディーのリズムギターは、あくまでもジャズのアンサンブルの中でのリズムなので、聴いていてハッキリとわかるというものではない。極端に言えば、弾いているのか弾いていないのかわかりにくい、存在感の希薄な感じである。しかし、フレディーのギターは明らかに隠し味となってサウンドのグルーヴに圧倒的重要性をもった役割を果たしている。それがわかるのが、ピアノソロのパートに入った時だ。フレディーのギターはスウィング感を出すうえでなくてはならない音となっていることがわかる。

『Mr. Rhythm』はフレディー唯一のリーダー作という意味で貴重だが、このアルバムが彼の最良の演奏を聴けるものではない。彼の最も素晴らしい演奏は、カウント・ベイシーのバンドメンバーとしての演奏である。そしてフレディーのギターを味わうなら、フルバンドよりはコンボがいい。スモールコンボだ。フレディーのギターはリズムに徹しているとはいえ、はっきりとその恐るべきグルーヴ感を楽しめると思う。

ベイシーがデッカ・レーベルに録音した楽曲はどれも素晴らしいのでお薦めだ。インパルス・レーベルに録音した『カンザスシティー・セブン』も大推薦で、歴史に残るアルバムである。ベイシーのアルバムとしても、完成度と人気度を併せ持って上位に来るくらいの傑作だ。
ベイシーがピーターソンと録音した『サッチ&ジョシュ』も素晴らしい。ピアノトリオ風に聞こえるが、ピアノは二人いるし、フレディーのギターも参加しているので、実は5人で演奏している。そういう意味でも面白い一枚。内容は見事なブルース&スウィング・フィーリングがあふれる傑作。

それと、あまり話題になることは少ないが、フレディーは作曲家としても素晴らしい楽曲を生み出している。ベイシーの『コーナーポケット』、『ダウン・フォー・ダブル』が有名。私も大好きな曲。

ジャズはリードパートのみを聴くのではなく、バンドアンサンブルやグルーヴを楽しむ音楽であることを、そのギター人生で証明して見せたフレディー・グリーン。脇役の美、ここにあり、というギタリストなのだ。



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