大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
うろたえず、媚びない。
そんなジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。
大橋 郁
松井三思呂
吉田輝之
平田憲彦
撰者:松井三思呂
このリレーコラムも一巡し、肩の力が少し抜けてきたところで、今回はモダンジャズの神様Charlie Parkerのニックネーム“Bird(Yardbird)”に関わるアルバムを紹介したい。「ヤードバード」の由来については諸説があるようだが、彼がジャズという音楽に起こした革命と同様に、ジャズメンのあだ名としては最も著名なものであろう。
そこで、まずは「Four Altos/Woods-Quill-Shihab-Stein」(PRESTIGE 7116)。ジャケットを見て欲しい。電線にとまる4羽の小鳥、この小鳥が4人のアルトサックス奏者〜Phil Woods、Gene Quill、Sahib Shihab、Hal Steinで、まさにCharlie Parker(バード)の許から飛び立とうとしていることを象徴している。リズム隊は、Mal Waldron(p)、Tommy Potter(b)、 Louis Hayes(ds)、内容はこの時期のプレスティッジお得意、典型的なハードバップ・ブローイングセッション。
ヘッドアレンジのユニゾンによるテーマに続き、どの曲でも4人がソロを競う。それほどスタイルや音色に差がないだけに、ブラインドフォールド・テストをやって誰のソロか完璧に当てる人がいたら、尊敬を通り越して、気味悪くなってしまいそうである。4人のなかではフィル・ウッズが最も若く、録音当時(1957年2月)25歳であったが、この後の音楽活動という面ではウッズが抜け出し、「バード」に近づいていく。
そう思えば、一番左の小鳥だけ残りの3羽から少し距離を置いているように見えるが、これがウッズかなと考えてしまう。まあ、バードに心酔して、チャン未亡人と結婚した人ですからねえ。
プレスティッジにはもっとストレートに、「Bird Feathers/Woods-Quill-Mclean-Jenkins-Mckusick」(PRESTIGE 8204)というアルバムもある。ただ、このアルバムは5人のアルトが一堂に会して録音したものではなく、Woods-Quill、Mclean-Jenkins、Mckusickによる3つのセッションのコンピである。6曲収録されており、タイトルにもなっているパーカー作のブルース“Bird Feathers”(パーカー自身は著名なDialセッションで初演)が興味深い。これは「Alto Madness/Jackie Mclean-John Jenkins」(PRESTIGE 7114)の残りテイクであるが、流麗なフレージングのマクリーン先生と、非常にパーカーっぽく突きささるようなジェンキンスと、両者のソロが好対照であり、是非聴いてみて欲しい。
最後に、前述の2枚のアルバムでも主役級の働きを見せているPhil WoodsとGene Quillによる双頭コンボの名盤を紹介したい。正直に言えば、このアルバムに魅せられたために前述の2枚もゲットした訳で、私の大愛聴盤である。ウッズとクイルの共演したアルバムは恐らく全部持っていると思うが、これが最高!
パーソネルは、2人に加えて、Bob Corwin(P)、Sonny Dallas(b)、Nick Stabulas(ds)。全6曲捨て曲なしで、熱いアルト・バトルが繰り広げられている。"A Night in Tunisia"(A-2)におけるジーン・クイルのソロ、彼がいかに過小評価されているか・・・。A面ラストは"Hymn for Kim“、キムはパーカーとチャンの間に生まれた女の子で、ウッズはチャンとの結婚によりキムも引き取る。この曲はキムに捧げられたウッズの佳曲。
B面がまたスゴイ! 1曲目"Dear Old Stockholm"、この曲についてはマイルスの「Round About Midnight」に収録されている演奏が名演の誉れ高いが、ワタシ的にはそれ以上と思う。この曲に続いて、"Scrapple from the Apple"が始まる。パーカー曲で超急速テンポ・・・そのなかでウッズは全くブレがない演奏能力を見せつける。神様パーカーが聴いたら、何とコメントしただろうか。
ここまで書いてきて、今回のコラムは結局「フィル・ウッズ祭り」になっていることに気がついた。彼は1931年11月生まれの79歳だが、現在も精力的にライブ活動を続けている。25年ぐらい前の来日時にはライブに行ったが、もう一度生で聴いてみたいミュージシャンである。
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