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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第5回
NEWPORT IN NEW YORK '72
vol.1,2,3,4,5,6

Various Artists
(Cobblestone)



ニューポート・イン・ニューヨーク '72
撰者:大橋 郁(さんふらわあ)


VOL.1.2 2枚組LP


VOL.3.4 2枚組LP


VOL.5 1枚ものLP


VOL.6 1枚ものLP


NEWPORT IN NEW YORK '72
2009年10月に初めて3枚組セットでCD化された。
AmazonやTOWER RECORDで入手可能
【Amazon のディスク情報】

Sunflower Jazz Night
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
さんふらわあ JAZZ NIGHT 公式サイトへ

Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

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高校時代、友人の兄が京都に下宿していた。そこで、京都へ小旅行してその下宿に泊めてもらおうと、週末に4人ほどで出かけたことがある。京都でどこを尋ね歩いたか、記憶があまり確かではないのだが、はっきりしているのは、「しあんくれーる」というジャズ喫茶に行ったことだ。「二十歳の原点」というある立命館大生の手記が単行本で発行されたのが1971年。そして、その本の中に何度か登場する「しあんくれーる」の名前を憶えていて、行ってみたくなったのだ。それが、多分1976年頃。そこで、このBuddahのサブレーベルCobblestoneから発売された「Newport In New York '72」を初めて聞いたのだった。
その時、鳥肌がたつほど感動したのがこの中のLo-Slo Bluzeという曲。ロウダウンな雰囲気の超スローでファンキーなブルースだ。Milt Buckner の地べたを這いずり回るようなハモンドB-3オルガンにしびれた。

このレコードは、VOL.1~6まで6枚あるのだが、もともと、VOL.1,2とVOL.3,4がそれぞれ2枚組で、VOL.5と、VOL.6がそれぞれ1枚ずつ発売されており、つまり4セットのバラ売りだった。大学生になってから、あの感動をもう一度、と思って中古レコード屋を探し回るが、なかなか見つからない。学生の間に見つけたのは、VOL.3,4の2枚組だけで、残りが見つからない。全部そろったのは25年後のことだった。

このコラムの第2回で松井さんが中古レコード屋回りの道順まで決めていたという話を書いていたが、中古レコード屋回りの楽しさは釣りにも似て、獲物はない日のほうが多い。それでもヒットしたときの手応えが忘れられず、「Must Buy List」を片手に、ついつい出かけたくなる。狙った釣りもの以外の「外道」がかかることもある。探しているときが楽しくてたまらない。そして探しているレコードが見つかったときの喜びは何にも替え難いもので、思わず「やっと会えたね」とレコードに向かって語りかけたくなってしまう。現在はネットオークションで、簡単に見つかるようになり、便利にはなったが中古レコード屋での「巡り会い」の楽しみは減ってしまったように思う。

前置きが長くなったがこのレコード、中身はもう完全なお祭りである。ジャムセッションの楽しさを知りたいのならこれ、というノリノリのブローイングセッションアルバムなのである。
内容は、6枚中VOL.1~VO.5のA面までは、ほとんど一面1曲で15分〜20分程度の長尺モノ。曲はNow's the time, Blue 'n' Boogie, So What, Jumpin' at the Woodside, Perdidoなどのいかにもジャムセッションらしい曲を取り上げている。出演者はこれまた大物揃いで、ディジー・ガレスピー、キャット・アンダーソン、メリー・ルー・ウィリアムス、スタン・ゲッツ、デクスター・ゴードン、ズート・シムズ、ローランド・カーク、ミルト・ジャクソン、ミンガス、ブレイキー、エルビン、ローチ、ハンコック、ロイ・ヘインズ、トニー・ウィリアムス、ケニー・バレルにB.B.キングなどなど、総勢62名だったというからキリがない。ニューヨークの ラジオシティミュージックホールや、ヤンキースタジアムなど数か所で録音されている。
VOL.6はThe Soul Sessionとしてロバータフラック、B.B.キング、カーティス・メイフィールドなども参加していて、VOL.5までとは少し趣向の異なる内容ではあるが、祭りの熱狂が伝わるという点では一貫性がある。
私自身は、白眉はNow's the Timeではないかと思っている。特にジェリーマリガンの豪快なソロが途中でブレイクする下りなどは何度聞いても胸がすく。

最初は「NEWPORT IN NEW YORK」という意味がよくわからなかった。この音楽祭のホームページを見ると、もともとロードアイランド州のニューポートという街で、1954年から始まったアメリカ最初のジャズ祭とある。高校時代に「真夏の夜のジャズ」という映画をみたことがあるが、これは1958年の開催時の様子を映画化したものだし、この音楽祭のライブ演奏をレコード化したものはMuddy Waters、Nina Simone、Ella Fitzgerald, Mahalia Jacksonなど沢山ある。
1972年に場所をニューヨークに移したが、プロデューサーのジョージウェインは、名称には権威あるNEWPORTの名を冠したままとした。
「NEWPORTJAZZFESTIVAL」名のブランド化は成功し、いくつかの地で、この名前を冠したジャズ祭が開催されるようになり、後に日本でも「Newport Jazz Festival in 斑尾」が開催される。1981年に本家ロードアイランド州のニューポートでも再開されるようになるが、ニューヨークでは名前を変えて現在も続いている。

筆者は、後年ロードアイランド州ニューポートを訪れたことがある。ニューヨークからクルマで北東に3時間半ほどのところにある避暑地・別荘地として有名な古い港町だ。19世紀末以降に建てられた富豪たちの豪邸が海岸に並び、これらの豪邸への旅行社のツアーまである。ロバート・レッドフォード主演の映画「華麗なるギャッツビー」は、ニューヨーク州ロングアイランドが舞台だが、邸宅街のシーンはこのロードアイランド州のニューポートでロケしたという。
この時は、時間もあまりなく町の中をクルマで駆け抜けただけだったが、いつかゆっくり再訪したい町である。このレコードを世に送り出すルーツとなったこの町の人達に敬意を払いつつ。


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