書海放浪記
風と砂利道
26歳、世界放浪紀行
平田憲彦
※
1992年4月24日(金)/ロンドン
地下鉄とバスの一週間フリーパスのチケットを買い、セント・ジョンズ・ウッドまで行った。ここから歩いてすぐの所にアビイ・ロードがある。東京の白金にある外苑西通りにとてもよく似た通りだった。
アビイ・ロード・スタジオの壁には様々な落書きがあり、壁そのものが白いのでとても目立つ。スタジオは美しい外観で、周囲の邸宅に馴染んでいる佇まいだ。ここであの音楽が生み出された、という実感がわかない。邸宅の中のひとつ、という雰囲気なのだ。とても音楽スタジオには見えない。出入りしている人も少ないし、ほんとうにここがあのスタジオなのだろうか。
アビイ・ロードを歩き、途中の雑貨屋でタバコとサンドウィッチを買ってレシートをもらった。レシートにはちゃんと店の名が記してある。そして住所も。Abbey Road, London NW8と。
アビイ・ロードに行く前に郵便博物館に寄ったのだが、古くからの手紙や切手が展示してあり、見応え充分。とりわけ筆跡が興味深かった。日本も含めて世界中のものがあったが、こんな遺産が簡単に、しかも無料で見られるところに英国の高い社会性を感じた。こういった仕組みを作れていない日本がとても残念に思える。
今は16時30分。これからキザイア・ジョーンズのチケットを取りに行って、ケイコに会わなければならない。外は雨で少々面倒だが。
ケイコの部屋ではキヨミさんと3人、パスタを食べた。気がついたら陽が暮れていた。12時ごろに3人でソーホーをうろつき、Fishというクラブに入る。流れていたのはソウルとファンク、ヒップホップ。選曲は申し分ない。そこで踊っていた黒人たちには圧倒された。何故あれほどカッコ良くセクシーにダンスできるんだろう。東京のディスコやクラブではまず見れない光景だ。
2時間ほど踊って、歩いてホテルまで帰る。ケイコとキヨミさんはナイトバスで帰って行った。
Copyright © 2003- Banshodo, Hirata Graphics Ltd. All Rights Reserved.