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美術展記事
平田憲彦
オン・ザ・ロード|森山大道写真展
国立国際美術館
2011年6月28日~9月19日
大阪中之島にある国立国際美術館で森山大道写真展が開催される。総出品点数は400点以上ということだから、森山大道の写真世界を深く体験できることは間違いないだろう。
森山大道は1938年大阪生まれの写真家である。商業デザインの仕事の後1960年に写真家・岩宮武二に師事、その後は細江英公に師事。細江英公が三島由紀夫を撮った写真集『薔薇刑』の紙焼きは森山大道である。1963年に独立することになる森山大道は、この『薔薇刑』て怪しく展開された光と影を体験することになる。ここが彼の原点であると言い切ることは出来ないだろうが、しかし、後の森山大道の写真世界の礎になったのではないか。それほど、光と影の存在感が通じるものがある。
写真が少しでも好きな人なら森山大道を知らない人はいないだろう。しかし、彼は荒木経惟や篠山紀信ほどポピュラーではない。AKB48を知っていても森山大道は知らない、という人がいてもなんら不思議ではないし、トレンドからもエンターテインメントからも無縁な写真家である。
珍しいところで、宇多田ヒカルのアルバムカバーを撮影したので宇多田ファンならば知っているかもしれないが、しかし、森山大道がどういった写真を撮り続け、日本のみならず世界の写真界、芸術の世界に多大な刺激を与え続けてきたのかということは知らないかもしれない。
写真をそれほど好きでなくても、自分では携帯の写メールくらいしか撮らないという人でも、全ての人には森山大道の写真を見てほしいと思うし、見るべきであると思う。
シャッターを押せば撮れてしまう、携帯のボタンを押せば撮れてしまう、それを写真だと思っている多くの人々に、森山大道の写真を見てもらいたい。写真とはモチーフを写すのではなく、自己の内面を撮るものだということを、400点もの写真の海に身を委ねれば、おそらく感じてもらえるのではないだろうかと思うからだ。
森山大道の写真集に『狩人』があるが、この“狩人”という言葉こそ、写真とは何か、写真家とは何かを物語っている。
2011年の夏、約2ヶ月半にわたって大阪で展開される森山大道の世界。
この写真展を見た後、あなたの写真は変わるだろう。
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