美術書庫
アート・コラム
平田憲彦
世界の新聞グラフィック
日本の代表的な新聞といったら、『朝日』『読売』『毎日』ということになる。その他、地方紙を入れると、日本で流通している新聞は膨大な数になり、それぞれに趣向を凝らした編集をしている。ということはつまり、それぞれに情報をいかに見せるか、どうやって読ませるかというグラフィックデザインが施されている。
そこには、単に情報の整理にとどまらず、美的な意味での視覚的工夫が思う存分に盛り込まれていて、見ていてとても楽しい。
しかし、日本の新聞はだいたい似たような考え方でデザインされていると感じる。
これはもしかしたら、国民性というか、ひとつの空間の中で生きている人たちにまとわりつく“似たような”美意識や情報の認識性、というものから来ているのかもしれない。
海外の新聞サイトを見ていると、やはりそう思わずにはいられない。
最近とりわけ注目しているのがイギリスの『ガーディアン』である。
この新聞、ペーパー版はあのペンタグラムがデザイン設計したことでも有名だが、グラフィックデザインが息をのむ美しさである。
文字と罫線と写真とイラスト、そして、色彩。この、グラフィックデザインの原点を、実に簡素に、また分かり易く、さらに美しくデザインしている。ハデさはないが、静かで強い、芯の通った見事なデザインだと思う。
ペーパー版とほぼ同じデザインをウェブでも再現していることからも、メッセージを伝えることに、グラフィックデザインがいかに大きな役割を果たしているか、ということを実践しているともいえる。
ガーディアン
http://www.guardian.co.uk/
同じくイギリスのタイムズも素晴らしいグラフィックデザイン。メリハリを効かせつつ、情報をしっかりと整理。しかも美しいレイアウト。
タイムズ
http://www.timesonline.co.uk/
アメリカの『ニューヨークタイムズ』もいい感じ。
http://www.nytimes.com/
フランスの『ル・モンド』もおもしろい。
http://www.lemonde.fr/
他にも、世界中の新聞サイトを見ていくと、実に刺激的である。
そして、新聞サイト世界一周をしたあと日本の代表的新聞サイトを見ると、グラフィックデザインのチカラが、まだ発揮できていないのではないかと思ってしまう。
まだまだやれるのではないか。
情報を整理しつつ、しかも美しく、芯の通ったデザインが。
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