書海放浪記
ハイデルベルグへの旅、1967年
父とドイツとニコンF
平田憲彦
10回:ローザンヌ、レマン湖の親子
撮影場所の記録が無いので想像だが、おそらくローザンヌだろう。レマン湖に散歩で訪れた親子を写している。ここでも父は、若い母親と幼児をモチーフにしている。
第9回で取り上げたカットと同様に、幼児はハッキリと父に向かって視線を向けているが、母親は撮影者である父に気がついていない。
しかし、第9回のカットと異なるのは、母親の幼児に向ける視線、そして表情である。
このカットの興味深い点は、なにより母親にとってのもう一人の子供、女の子の視線だろう。この子供が母親に何を言いたいのか、あえて書くまでもないと思う。
それにしても、このベビーカーのデザインは良い感じだ。そして女の子のファッションも良い。
ポジフィルムは傷が多くて退色も激しく、私の技術での再現はこれが限界。これ以上となると、着色しかない。青い空、美しいレマン湖。きっと父は、この風景に身を任せて、日本に残してきた妻と息子を撮影したのだろう。
撮影:平田勝彦(1967年)
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