書海放浪記
ハイデルベルグへの旅、1967年
父とドイツとニコンF
平田憲彦
第8回:岩と雪と空、モンブラン
モンブランの写真。とても気持ちの良い構図である。遙かに伸びていく雲海と大空、そしてモンブランの堂々としたたたずまいを安定した構成でフレームに収めている。わかりやすい普通の写真だが、モチーフをセンターに配置することの多い父なので、このカットはよく考えてシャッターを切ったのではないだろうか。
単なる岩と雪と空である。ただそれだけである。明らかに、生き物は生きていくことが出来ない環境だろう。この風景から約4000メートル下には、緑も水も生き物も栄えている世界があるはずだが、まったくそれが分からない。死すら感じることの出来ない岩と雪の世界。それなのに、強く惹きつけられるのはなぜだろうか。
撮影:平田勝彦(1967年)
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