書海放浪記
ハイデルベルグへの旅、1967年
父とドイツとニコンF
平田憲彦
第7回:エギュイユ・ドュ・ミディ展望台から
モンブランの写真。これはどの山を撮ったものか、あれこれ調べたが分からなかった。おそらくエギュイユ・ドュ・ミディ展望台から撮ったのではないだろうか。他の写真と同様に。
めずらしくモチーフがセンターから外してあるように見えるが、私の見方では、これもまたモチーフをセンターにしていると思える。
それは稜線だ。
ゴツゴツと厳しい表情で見るものを惹きつける圧倒的な稜線。父はそれを撮りたかったのではないだろうか。そして、その向こうに広がる遙かな山々。人間も、動物も、植物さえも見当たらない岩と雪で覆われた大地、そしてまっすぐに広がる空。
写真を撮っているというよりは、山々に撮らされているような無防備さすら感じられる1枚である。
撮影:平田勝彦(1967年)
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