書海放浪記
ハイデルベルグへの旅、1967年
父とドイツとニコンF
平田憲彦
第5回:ローレライ伝説
あと15分でローレライ、という看板。Aufstiegとはドイツ語で『上昇』を意味するらしいので、上り坂15分ほどでローレライに着きます、という意味だろう。
その下の『Trinkhalle』とは、ドイツ語で、飲泉館を意味するらしい。健康増進や疲労回復、治療目的などで、温泉を飲用させる施設とのことだ。
私は全くドイツ語が分からないので、インターネットで調べておおよその意味を理解したが、父はハイデルベルグへの出張でいろいろなドイツを巡っていたことを知った。
ウィキペディアによると、(以下、引用)ローレライ (ドイツ語: Loreley) は、ライン川流域の町ザンクト・ゴアルスハウゼン近くにある、水面から 130 m ほど突き出た岩山のことであり、スイスと北海をつなぐこの河川でも一番狭いところにある。流れが速く、水面下に多くの岩が潜んでいるため、かつては航行中の多くの舟が事故を起こした場所である。現在は幾度にも渡る工事により大型船が航行できるまでに川幅が広げられ、岩山の上には、ローレライセンター (Besucherzentrum Loreley) が建てられている。
ローレライ伝説は、上述のようにローレライ付近が航行の難所であったことが、ローレライにたたずむ美しい少女に船頭が魅せられ、船が川の渦の中に飲み込まれてしまう、という伝説に変化したものである。
ライン川下りは、ドイツの観光として有名であるが、ローレライ周辺は、ブドウ畑や古城が建ち並ぶ、見所の多い辺りである。また、この岩山に向かって叫ぶと木霊が返ってくるため、舟人たちの楽しみにもなっていたともいわれている。(引用、以上)という名所のようだ。
確かに、ローレライという言葉はどこかで聞いたことがある。それがどこだかは思い出せないが。
ここへはどうやって来たのだろうか。ハイデルベルグ社を写した写真に観光バスらしきものが見えるので、おそらくそのバスで観光地巡りをしたのではないか。そのバスの同乗者だろうか、遠くでライン川を背に記念撮影をしている人が見える。
ローレライ伝説という物語があることも、私は知らなかった。ローレライにたたずむ美しい少女。このモノクロ写真では想像しにくいが、美しい緑の山々と豊かなライン川に岩が潜んでいるのであれば、船が事故を起こすその理由を、川に突如現れる美しい少女のせいにしたくなるのも、分からないでもない。
アマチュアながらとてもよく考えられた構図で、写真が好きだった父が自信をもってシャッターを切った様子が思い起こされる。
撮影:平田勝彦(1967年)
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