書海放浪記
ハイデルベルグへの旅、1967年
父とドイツとニコンF
平田憲彦
第2回:モンブラン
ハイデルベルグへの旅で父はいろいろな観光地も巡ったようだ。工場での写真もいくつか残されているが、仕事以外の写真が多い。
この写真はモンブランである。
モンブランにケーブルカーで登ったという話は、何度か聞いた。標高3842m地点までケーブルカーで登ることが出来るようなので、きっとその地点までは登ったのだろう。
この写真は、おそらくその3842mでの写真と思われる。あと1km程で山頂という地点。こんな標高までケーブルカーを引いているということにまず驚くが、なにより『登山者』ではない多くの観光客にとってモンブランというヨーロッパ最高峰の山に親しめるという意義は大きい。
スーツ姿でケーブルカー登山とは言え、ヨーロッパアルプス最高峰のモンブランに登ったことは父にとって忘れがたい思い出となっていたことは、その後、幼い頃の私に何度も話して聞かせたことでうかがい知れる。モンブラン展望台から撮影したと思われるこれらヨーロッパアルプスの遙かな山並みは、44年経った今でも壮大な眺めであり、この写真を通じて私は父の視線を共有できているような気になってくる。
私は3842mなどという標高地点まで行ったことはないし、モンブランも見たことはない。しかし、この写真のアングルで父が何に惹かれたのかは感じることが出来る。
ウィキペディアから少し引用する。
〜モンブラン(仏: Mont Blanc 伊: Monte Bianco)は、フランスとイタリアの国境に位置する、ヨーロッパアルプスの最高峰。標高4810.9m。ヨーロッパではロシアのエルブルス山に次ぎ高い山であり、西ヨーロッパでは最高峰である。
フランス語でモン (Mont) は「山」、ブラン (Blanc) は「白」を意味し、「白い山」の意味である。イタリアでは、イタリア語で同じく「白い山」の意味のモンテ・ビアンコ (Monte Bianco) と呼ばれる。また、「白い婦人」を意味するLa Dame Blancheというフランス語の異名もある。
現在、モンブランは年平均2万人の登山者によって登頂されている。熟練した登山者にとっては難易度はそれほど高くない。モンブラン近くのエギーユ・デュ・ミディの、標高3842m地点までケーブルカーで登ることができ、そこからモンブラン山頂までの標高差は1000m程に過ぎない。
しかし、今日でもモンブランは多くの死傷者を出している山であり、最盛期の週末には、地元のレスキュー隊が一日平均12回も出動している。これらの多くは一般の登山道への出動である。モンブラン登頂には、高高度における登山の知識、ガイド(もしくは熟練の登山者)、そして十分な装備が不可欠である。登山路には滑落の危険性がある部分などもある。また、高山病の危険性もある。〜
父は何の縁か、モンブランのマイスターシュティックを持っていた。一番太いタイプのものだ。万年筆で字を書いているところを見たことはないが、道具好きがこうじて手に入れたのかもしれない。
今は私が時折手紙に使っている。ブランドの名声に違わず、書き味はやはり素晴らしい。
モンブランの万年筆が遺品だなんて、あまりにも出来すぎの話だが、それもまた父らしいのかもしれない。
撮影:平田勝彦(1967年)
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