書海放浪記
書物迷宮
平田憲彦
青空と智恵子
久しぶりに青空文庫をのぞいたら、『智恵子抄』がアップされていた。
ということで、今回のタイトルは『青空と智恵子』。
高村光太郎が「あどけない話」に描いた“智恵子は東京に空が無いといふ”という一節を思い出す。
昔、詩は重くて読めない、と言った友人がいた。ちょうど私が23歳くらいのころだったか。友人も同じ歳で英語が堪能、ハードロックが好きだった。私もハードロックは好きだったが、好きなバンドはかなり違っていた。
私はそのころ、詩といえば谷川俊太郎さんのことを指すというくらい惚れ込んでいたので、ある時、谷川さんの話をしたのである。そうしたら、前述のことを言われた。
それから、私は少しずつ谷川さん以外の詩も読むようになった。今では、書棚に高村光太郎の詩集も並んでいる。
青空文庫で『智恵子抄』が無料で読める、ということ。すばらしいことだと思う。
詩は、読むたびに新しい。
まずは、気軽に読んでみる。そして気に入ったら、書物の詩集を手に入れる。ページをめくる。紙の匂いをかぐ。活字のにじみを見る。やがて、行間から自分の世界が見えてくる。
青空文庫は、そんな読書体験の入り口でもある。
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